雑誌『新青年』(2021年5月11日)
神奈川近代文学館で「創刊101年記念展 永遠に『新青年』なるもの ミステリー・ファッション・スポーツ」が開催されています。今回は雑誌『新青年』に関連する雑誌記事索引を紹介します。
『新青年』は1920年1月創刊です。日本に探偵小説というジャンルを確立した雑誌で、海外探偵小説の翻訳を多数掲載していました。『週刊朝日別冊』1957年10月28日号 水谷準「作家をつくる話 3回 懐しき『新青年』時代」では自身も翻訳し編集まで行っていた水谷準がそのころのエピソードを執筆しています。
創刊から数年もすると『新青年』には日本人の小説家も多数登場してきます。夢野久作や小酒井不木、甲賀三郎、大下宇陀児が執筆をしますが、なんと言っても江戸川乱歩の存在は大きなものでした。無名の新人だった江戸川乱歩自身が編集長の森下雨村へ小説『二銭銅貨』『一枚の切符』とそれらの批評をもとめる手紙を郵便で送ってきたエピソードがあります。『二銭銅貨』は1923年4月号に掲載され、いよいよ日本人による探偵小説創作が活発になりました。
この1923年4月号には『二銭銅貨』の後に小酒井不木「『二銭銅貨』を読む」という書評記事や、江戸川乱歩「探偵小説に就いて」という感想を綴った記事も掲載されています。小酒井不木は一読して優れた作品だと認め、文章の最後で「この作が他の多くの立派な探偵小説家の輩出する導火線とならん事を祈るのである。」と締めくくっています。一方、展覧会では江戸川乱歩は最初から大きな自信があったように展示していましたが、この記事では「私は今自分が書いたものについては、唯恥ずかしい様な気がしている」というように謙遜していて、展示を見た後だとなんだか疑わしいような可笑しい文章です。
「探偵小説」で有名な『新青年』ですがWeb OYA-bunkoの索引には、「モダニズム文化を開花させた」という内容の記事が多く見られます。確かに「新青年」とは「モダンボーイ」と訳すことができなくもない誌名ですが、これを推進していたのは2代目編集長で、後に探偵小説をいくつも創作する横溝正史だというのもおもしろいところです。探偵小説も掲載しながらモダンなファッションやイラスト、ユーモア小説、そして六大学野球やオリンピックの様子なども掲載していましたが、江戸川乱歩はそんな『新青年』に「もう書く気がしなくなった」と拒否反応を示したという後日談もあります。
その後、戦争が激しくなると休刊となります。戦後1945年10月に復刊し、水谷準や横溝武夫、高森栄次が編集にあたります。横溝正史の『八つ墓村』の連載を始めたりしましたが、城昌幸や江戸川乱歩が編集に関わった雑誌『宝石』に人気を奪われていき、1950年7月に廃刊となってしまいます。ですが今につづく日本ミステリー小説の礎を作ったのは、やはり『新青年』と言っていいでしょう。今読んでもおもしろい大変魅力的な雑誌です。
※今回紹介した索引の雑誌記事コピーをご希望の場合は、遠隔地の方でも資料配送サービスで取り寄せることが出来ます。 どうぞご利用下さい。
No1
記事種類 書評
タイトル 新書の穴 166回 川合道雄『戦時下の博文館と「新青年」編集部』近代文芸社新書 『新青年』で花開いたモダニズムの行方を考えた
執筆者 海野弘
雑誌名
週刊朝日
発行日
2008年07月04日
ページ 108
備 考 文芸雑誌,「新青年」
No2
記事種類
タイトル 《笑いと文学》 暗い時代の小市民喜劇 戦時下『新青年』と新喜劇
執筆者 中野正昭
雑誌名
文学
発行日
2002年03月
ページ 232-242
備 考 戦争と娯楽,文芸雑誌,娯楽,「新青年」
No3
記事種類
タイトル 当世粋談義 30回 モダニズムの時代 しのび寄る長く暗い時代を前に、束の間の光を投げかけた新しき風俗 ※昭和初期モダニズム、雑誌『新青年』から
執筆者 板坂元
雑誌名
サライ
発行日
1998年01月22日
ページ 38-39
備 考 ‖板坂元[創価大学]連載‖昭和初期の世相,昭和の世相,文芸雑誌,「新青年」
No4
記事種類 書評
タイトル BOOK 『新青年』の作家7人をさまざまな角度から捉え直す 山下武『「新青年」をめぐる作家たち』筑摩書房
執筆者
雑誌名
鳩よ!
発行日
1996年09月
ページ 115
備 考 ‖山下武[作家]‖文芸雑誌,「新青年」
No5
記事種類
タイトル MAN AT HIS BEST 世田谷文学館 編集長、横溝正史が憧れたのは悔しいかな『ニューヨーカー』だった。 ※雑誌『新青年』を中心とした企画展を開催中
執筆者
雑誌名
エスクァイア日本版
発行日
1995年06月
ページ 19
備 考 文芸雑誌,「新青年」
No6
記事種類
タイトル たのしい文学 「新青年」の小宇宙 乱歩からもう1歩
執筆者 高山宏
雑誌名
CREA
発行日
1994年10月
ページ 104-105
備 考 文芸雑誌,「新青年」
No7
記事種類
タイトル 「モダン」の美学 大正・昭和の美と暮らしとエロス 庶民の夢花開き 博文館は、雑誌の王国だった! ※「新青年」など現代の雑誌文化の原形をつくった出版社
執筆者
雑誌名
自由時間
発行日
1993年08月05日
ページ 71
備 考 出版社,雑誌,博文館
No8
記事種類 書評
タイトル BOOK review 新刊紹介 大石雅彦『「新青年」の共和国』水声社
執筆者 小笠原賢二
雑誌名
すばる
発行日
1993年04月
ページ 325
備 考 ‖大石雅彦[ロシア文学,同志社大学]‖文芸雑誌,「新青年」
No9
記事種類
タイトル 少年少女の昭和史 あの本・あの歌・あの話 11回 江戸川乱歩と冒険探偵小説 ※『少年倶楽部』1936年1月号に二十面相初登場、『新青年』と探偵小説作家など
執筆者 秋山正美
雑誌名
花も嵐も
発行日
1990年05月
ページ 80-81/84-85
備 考 ‖江戸川乱歩[作家]‖推理小説,ミステリー,昭和の世相,連載
No10
記事種類
タイトル 証言!昭和の翻訳 「その頃」という時代は コーヒー代は5銭、『新青年』は60銭 ※第5代編集長による昭和初期の『新青年』、翻訳原稿料、翻訳権と翻訳家
執筆者 乾信一郎
雑誌名
翻訳の世界
発行日
1989年01月
ページ 36-37
備 考 ‖乾信一郎[作家,翻訳家,劇作家]‖文芸雑誌,「新青年」
No11
記事種類 書評
タイトル LIVRES 『新青年読本 全1巻』作品社
執筆者 風間賢二
雑誌名
マリ・クレール
発行日
1988年06月
ページ 242
備 考 文芸雑誌,「新青年」
No12
記事種類 書評
タイトル 読書あんない 『新青年』研究会編「『新青年』読本全1巻 昭和グラフィティ」やっぱり世紀末だったと納得しないためにも
執筆者 池田浩士
雑誌名
新地平
発行日
1988年06月
ページ 123-125
備 考 文芸雑誌,「新青年」
No13
記事種類
タイトル 「新青年」の再評価の中で、とりわけ注目に価するのは表紙を27年間描き続けた松野一夫だ
執筆者
雑誌名
Emma
発行日
1985年11月10日
ページ 82
備 考 ‖松野一夫[挿絵画家]‖26-005-007[雑誌]文芸雑誌‖
No14
記事種類 書評
タイトル 週刊図書館 昭和初年の「都会文化」の味わい 復刻版『新青年』国書刊行会
執筆者
雑誌名
週刊朝日
発行日
1985年05月03日
ページ 126-128
備 考 ‖書評‖26-005-007[雑誌]文芸雑誌‖
No15
記事種類
タイトル 作家をつくる話 3回 懐しき「新青年」時代
執筆者 水谷準
雑誌名
週刊朝日別冊
発行日
1957年10月28日
ページ 142-147
備 考 文芸雑誌,「新青年」
『新青年』 当館所蔵号
1920年1月号(1巻1号) 創刊号
1920年2月号(1巻2号)
1920年3月号(1巻3号)
1920年4月号(1巻4号)
1920年5月号(1巻5号)
1920年6月号(1巻6号)
1920年7月号(1巻7号)
1920年8月号(1巻8号)
1920年9月号(1巻9号)
1920年10月号(1巻10号)
1920年11月号(1巻11号)
1920年12月号(1巻12号)
1921年1月号(2巻1号)
1921年2月号(2巻2号)
1921年3月号(2巻3号)
1921年4月号(2巻4号)
1921年5月号(2巻5号)
1921年6月号(2巻6号)
1921年7月号(2巻7号)
1921年8月号(2巻8号)
1921年8月10日号 増刊(2巻9号)
1921年9月号(2巻10号)
1921年10月号(2巻11号)
1921年11月号(2巻12号)
1921年12月号(2巻13号)
1922年1月号(3巻1号)
1922年2月号(3巻2号)
1922年2月10日号 増刊(3巻3号)
1922年3月号(3巻4号)
1922年4月号(3巻5号)
1922年5月号(3巻6号)
1922年6月号(3巻7号)
1922年7月号(3巻8号)
1922年8月号(3巻9号)
1922年8月10日号 増刊(3巻10号)
1922年9月号(3巻11号)
1922年10月号(3巻12号)
1922年11月号(3巻13号)
1922年12月号(3巻14号)
1923年1月号(4巻1号)
1923年1月10日号 増刊(4巻2号)
1923年2月号(4巻3号)
1923年3月号(4巻4号)
1923年4月号(4巻5号)
1923年5月号(4巻6号)
1923年6月号(4巻7号)
1923年7月号(4巻8号)
1923年8月号(4巻9号)
1923年8月10日号 増刊(4巻10号)
1923年9月号(4巻11号)
1923年10月号(4巻12号)
1923年11月号(4巻13号)
1924年1月号(5巻1号)
1924年1月10日号 増刊(5巻2号)
1924年2月号(5巻3号)
1924年3月号(5巻4号)
1924年4月号(5巻5号)
1924年5月号(5巻6号)
1924年6月号(5巻7号)
1924年7月号(5巻8号)
1924年8月号(5巻9号)
1924年8月5日号 増刊(5巻10号)
1924年9月号(5巻11号)
1924年10月号(5巻12号)
1924年11月号(5巻13号)
1924年12月号(5巻14号)
1925年1月号(6巻1号)
1925年1月10日号 増刊(6巻2号)
1925年2月号(6巻3号)
1925年3月号(6巻4号)
1925年4月号(6巻5号)
1925年5月号(6巻6号)
1925年6月号(6巻7号)
1925年7月号(6巻8号)
1925年8月号(6巻9号)
1925年8月5号 増刊(6巻10号)
1925年9月号(6巻11号)
1925年10月号(6巻12号)
1925年11月号(6巻13号)
1925年12月号(6巻14号)
1926年1月号(7巻1号)
1926年2月号(7巻2号)
1926年2月10日号 増刊(7巻3号)
1926年3月号(7巻4号)
1926年4月号(7巻5号)
1926年5月号(7巻6号)
1926年6月号(7巻7号)
1926年7月号(7巻8号)
1926年8月号(7巻9号)
1926年8月10日号 増刊(7巻10号)
1926年9月号(7巻11号)
1926年10月号(7巻12号)
1926年11月号(7巻13号)
1926年12月号(7巻14号)
1928年7月号(9巻8号)
1928年8月号(9巻9号)
1928年9月号(9巻11号)
1928年10月号(9巻12号)
1928年11月号(9巻13号)
1928年12月号(9巻14号)
1929年1月号(10巻1号)
1929年2月号(10巻2号)
1929年2月10日号 増刊(10巻3号)
1929年3月号(10巻4号)
1929年4月号(10巻5号)
1929年5月号(10巻6号)
1929年6月号(10巻7号)
1929年7月号(10巻8号)
1929年8月号(10巻9号)
1929年8月1号 増刊(10巻10号)
1929年9月号(10巻11号)
1929年10月号(10巻12号)
1929年11月号(10巻13号)
1929年12月号(10巻14号)
1930年1月号(11巻1号)
1930年2月号(11巻2号)
1930年2月5号 増刊(11巻3号)
1930年3月号(11巻4号)
1930年4月号(11巻5号)
1930年5月号(11巻6号)
1930年5月10日号 増刊(11巻8号)
1930年6月号(11巻7号)
1930年7月号(11巻9号)
1930年8月号(11巻10号)
1930年8月5号 増刊(11巻11号)
1930年9月号(11巻12号)
1930年10月号(11巻13号)
1930年11月号(11巻14号)
1930年11月5日号 増刊(11巻15号)
1930年12月号(11巻16号)
1931年1月号(12巻1号)
1931年2月号(12巻2号)
1931年2月5号 増刊(12巻3号)
1931年3月号(12巻4号)
1931年4月号(12巻5号)
1931年5月号(12巻6号)
1931年6月号(12巻7号)
1931年6月5日号 増刊(12巻8号)
1931年7月号(12巻9号)
1931年8月号(12巻10号)
1931年8月5号 増刊(12巻11号)
1931年9月号(12巻12号)
1931年10月号(12巻13号)
1931年11月号(12巻14号)
1931年11月5日号 増刊(12巻15号)
1931年12月号(12巻16号)
1932年1月号(13巻1号)
1932年2月号(13巻2号)
1932年2月5日号 増刊(13巻3号)
1932年3月号(13巻4号)
1932年4月号(13巻5号)
1932年5月号(13巻6号)
1932年6月号(13巻7号)
1932年7月号(13巻8号)
1932年8月号(13巻9号)
1932年8月5日号 増刊(13巻10号)
1932年9月号(13巻11号)
1932年10月号(13巻12号)
1932年11月号(13巻13号)
1932年12月号(13巻14号)
1933年1月号(14巻1号)
1933年2月5日号 増刊(14巻3号)
1933年3月号(14巻4号)
1933年4月号(14巻5号)
1933年5月号(14巻6号)
1933年7月号(14巻8号)
1933年8月号(14巻9号)
1933年9月号(14巻11号)
1933年11月号(14巻13号)
1933年12月号(14巻14号)
1934年1月号(15巻1号)
1934年2月号(15巻2号)
1934年2月5日号 増刊(15巻3号)
1934年3月号(15巻4号)
1934年4月号(15巻5号)
1934年5月号(15巻6号)
1934年6月号(15巻7号)
1934年7月号(15巻8号)
1934年8月号(15巻9号)
1934年8月5日号 増刊(15巻10号)
1934年9月号(15巻11号)
1934年10月号(15巻12号)
1934年11月号(15巻13号)
1934年12月号(15巻14号)
1935年1月号(16巻1号)
1935年2月号(16巻2号)
1935年2月5日号 増刊(16巻3号)
1935年3月号(16巻4号)
1935年4月号(16巻5号)
1935年5月号(16巻6号)
1935年6月号(16巻7号)
1935年7月号(16巻8号)
1935年8月号(16巻9号)
1935年8月5日号 増刊(16巻10号)
1935年9月号(16巻11号)
1935年10月号(16巻12号)
1935年11月号(16巻13号)
1935年12月号(16巻14号)
1936年1月号(17巻1号)
1936年2月号(17巻2号)
1936年2月5日号 増刊(17巻3号)
1936年3月号(17巻4号)
1936年4月号(17巻5号)
1936年5月号(17巻6号)
1936年6月号(17巻7号)
1936年7月号(17巻8号)
1936年8月号(17巻9号)
1936年8月5日号 増刊(17巻10号)
1936年9月号(17巻11号)
1936年10月号(17巻12号)
1936年11月号(17巻13号)
1936年12月号(17巻14号)
1938年1月号(19巻1号)
1938年2月号(19巻2号)
1938年2月5日号 増刊(19巻3号)
1938年3月号(19巻4号)
1938年4月号(19巻5号)
1938年4月5日号 増刊(19巻6号)
1938年5月号(19巻7号)
1938年5月5日号 増刊(19巻8号)
1938年6月号(19巻9号)
1938年7月号(19巻10号)
1938年7月5日号 増刊(19巻11号)
1938年10月号(19巻15号)
1938年11月号(19巻16号)
1938年11月5日号 増刊(19巻17号)
1938年12月号(19巻18号)
1939年1月号(20巻1号)
1939年2月号(20巻2号)
1939年2月5日号 増刊(20巻3号)
1939年3月号(20巻4号)
1939年5月号(20巻6号)
1939年5月5日号 増刊(20巻7号)
1939年6月号(20巻8号)
1939年7月号(20巻9号)
1939年8月号(20巻10号)
1939年8月5日号 増刊(20巻11号)
1939年9月号(20巻12号)
1939年10月号(20巻13号)
1939年11月号(20巻14号)
1939年11月5日号 増刊(20巻15号)
1939年12月号(20巻16号)
1940年9月号(21巻11号)
1945年12月号(26巻4号)
1950年7月号(31巻7号) 休刊号
展覧会では創刊号から休刊号までの実物を置き、表紙の変遷がわかるようになっていて実に壮観な展示となっていました。表紙の並びを見ますと『新青年』は松野一夫が描いた女性の顔の絵画を表紙にした時期が長い期間ありましたが、戦時中は男性の顔の絵画でした。当館では戦時中の『新青年』は所蔵がありませんが、多くの日本人探偵小説家が活躍した戦前のものは比較的そろっています。状態はあまりよくないですが手にとって閲覧することができます。