「情報」の語源(2025年5月30日)
『国際商業』2006年7月号に「情報」という言葉の語源が紹介されていました。
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- 記事種類
- タイトル
- THE TREND OF THOUGHT 情報と森鴎外 ※クラウセヴィッツ『戦争論』の訳で初めて「情報」という造語を用いた鴎外
- 発言者
- 正慶孝
- 雑誌名
- 国際商業
- 発行日
- 2006年07月
- ページ
- 133
- 備 考
- ‖森鴎外[作家,医者]‖
明星大学 正慶孝教授の書かれた連載「THE TREND OF THOUGHT」の1回目「情報と森鴎外」というタイトルの記事です。
「情報」という言葉は森鴎外による造語だ、という説はご存じの方も多いかと思います。記事によると、その根拠は鴎外がカール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』を翻訳した時に「Nachricht」というドイツ語を「情報」と訳したことだそうです。 [naːxrɪçt
(ナーハリヒト)]と発音するそうですが、この言葉は英語の「News」に相当するそうです。
翻訳されたのは1903年(明治36年)です。最初に登場する箇所で言葉の説明もあり「情報とは敵と敵国とに関する我知識の全体を謂う 是れ我が想定及び諸作業の根拠なり…」と書かれていて「敵の情況を報告する」というような時に使われていました。『戦争論』で使用されたこともあり、当時は軍事用語であまり良い印象の言葉ではなかったそうです。
疑問に思うのは「Information」の略語ではないことです。それについても記事では紹介されていて、「インフォメーション」を最初に用いたのは福沢諭吉だそうです。特に翻訳はせず1879年(明治12年)『民情一新』という書物の中で「聞見を博して事物の有様を知る」という意味で使用されているそうです。
しかし「情報」という言葉には大いなる魅力が内包されていたのか、いつの間にか「情報」=「インフォメーション」となって一般に使用されるようになります。正慶孝教授によると言葉の印象がプラスイメージに転じるのは情報機器、特にコンピュータが登場する昭和の中ごろからだそうです。そして「権力者が情報管制や情報操作のために情報を用いたり、偽情報が大手を振って横行しているような社会は、望ましい社会とはいえない。情報に心情を奪われてはならないのである。」「“聞見を博して事物の有様を知る”には「教養」が重要である」と語っています。