「炎は流れる 明治と昭和の谷間」①

書誌情報

昭和39年  2月25日発行(1964)
著作者 大宅壮一
発行者 上林吾郎
印刷所 凸版印刷
発行所 文藝春秋新社
14cm×20.4cm(函入 ハードカバー)、本文254頁

 
目次

まえがき

明治天皇と乃木希典 世界史の奇跡「明治日本」、これを象徴する二人の人間像
 明治を象徴するふたり
 乃木夫妻の劇的な生涯
 隠された遺書
 男にして下さい!
 ごきげんの蘇峰
 伏せられた意思
 信念つらぬいた本堂署長
 計画的に資料提供?
 浸透した乃木イズム
 はんらんする“乃木劇”

殉死は浪漫か背徳か 将軍の劇的な自刃をめぐる二つの相反する文化人の反応
 創造された二柱の“神”
 時事新報の断定
 「大将、凡人にあらず」
 谷本博士の“筆禍”
 熊楠の“異色論文”
 鴎外の乃木観
 漱石と芥川の批判
 学習院出身者の態度
 天皇のご意思で院長に
 反対論者も心酔
 軍服と毛布の日常
 位置は楠公に似たり

日本の宗教「武士道」 新渡戸稲造の名著で初めて世界的名物となったブシドー
 勇気づけた日露戦争
 自刃たたえた新渡戸稲造
 徳川初期は殉死競争も
 『葉隠』的な忠誠心
 忠義心から愛国心へ
 純粋なキリスト教徒的な人格
 “聖将”にたとえた徳富蘆花

もう一つの明治典型 将軍と同じ精神的土壌から生れた左翼殉教の人・河上肇
 新渡戸博士の「切腹」弁護論
 武士道とキリスト教
 内村の忠誠心の対象
 劣らぬ河上の純粋性
 “無我の愛”に傾倒
 神秘的な河上の行動
 “商業は睡眠のごとし”
 乃木イズムの再登場
 伝統的な集団統制

血縁・家系・日本人 血縁的な宿命を地域的な関係の上に置く日本の精神構造
 先祖は佐佐木高綱
 意識は血よりも濃し
 家系を重んじる精神
 山陰地方の役割り
 ウマがご主人
 赤穂義士ゆかりの地で誕生
 強烈な暗示“切腹”

乃木将軍と赤穂義士 二つの伝説が太平ムードへの覚醒剤の役割りをした理由
 乃木と義士の警世的効果
 信用できる福本日南
 “仇討ち”の問題点
 腹を刺せば確実
 内匠頭に同情あつまる
 血判状に七十余名
 底流にある陽明学思想
 『中朝事実』を自費出版

大石良雄という人物 将軍とおなじく警世的効果を同時代に及ぼした人間の謎
 昼行灯と大英断
 山科で道楽ざんまい
 同志も疑った享楽
 脱落あいつぐ
 新参者が多かった
 慎重な“同志選び”
 義士に死者なし

江戸町民が見た義士 明治で公認賛美されるに至るまでの義挙の受けとられ方
 義挙に寛大な処置
 江戸市民は支持
 “特赦”の風説も
 徂徠が厳罰を主張
 民衆は切腹に不満
 讃美に逆らった学者
 義士にあらず
 冷淡だった地元
 わからなかった能力
 也有、非義士論に一矢
 水戸学は称讃
 警世と憂国の思想
 反幕感情を秘めて……
 公認された忠誠

浪曲に生きた二神話 義士伝と乃木の自刃で最高潮に達した大正の浪曲ブーム
 周期的な“義士熱”
 講談にかわって浪花節
 売り出した雲右衛門
 乃木殉死で最高潮
 海を渡った忠臣蔵
 高橋是清の義士観
 外債調達に一役
 ハムレットと忠臣蔵
 由良蔵と由良吉もある……

ノギイズムの原形質 長州藩の児島高徳という異名をとった忠誠の人将軍の父
 古い型の“忠誠心”
 身分は中の下
 将軍の日本的陰影
 三百里歩き通す
 郷里に残る乃木イズム

明治を形成した群像 維新をリードした下級武士の忠誠が少年乃木に投げた影
 “勤皇”は倒幕の手段
 改名と人間の成長
 天才的なアジテーター
 彦九郎の忠誠心
 四分のズルさ
 徹底した抵抗精神
 すべてが父と反対
 松陰の密書を携行
 和宮降嫁で一波乱
 根強い大陸雄飛熱

小国の裏街道を行く

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